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(*゚ー゚)しぃでマターリ平和スレ (゚ー゚*)

83 :ほんわか名無しさん :03/05/15 21:49
5月5日は子供の日。鯉のぼりは、澄んだ青空を泳ぐ。
だが、この家には鯉のぼりが泳いでいなかった。この家は、狂気の家。

薄汚れた北側の部屋に、一人の子供がうずくまっている。
湿った煎餅布団にくるまりながら、絶望から目をそらしている。
まだ、小さな、ちびギコ。
その表情には、生気がない。まるで、出来の悪い人形のようだ。
もっとも、彼がこうなったのには原因がある。
今、襖が開いて、その原因がズカズカと入ってきた。
ちびギコの母親である。しぃと言う名の、厄災。
「チョット、ハヤク オキナサイ。ナニ、ネテルノヨ」
短い足を伸ばして、しぃは、ちびギコがくるまっている布団を蹴り上げた。
ちびギコは、ダンゴ虫のように丸くなった。
しぃは、ちびギコを見下ろすと、チッと舌打ちをした。
「コンナ モノ、ウマナケリャ ヨカッタノニッ」
  ……こんな物の子供に、産まれなければ良かったデチ。
心の中で悪態を吐くのが、ちびギコに出来るせめてもの反抗だった。
しぃは、無言のちびギコを枕で殴りつけると、ヒステリックにわめき立てた。


84 :ほんわか名無しさん :03/05/15 21:49
「カエシテヨッ! アンタニ ツイヤシタ オカネッ。ウマレゾコナイッ!!」
  お前もちびタンに返すデチよ。ちびタンの、将来への希望、幸せを返すデチ。
「アンタガ イナケリャ、アノ モララート サイコン デキタノニッ!!
 ソダテテヤッタノニ、チットモ イイコト ナイ ジャナイ!? ヤクタタズ」
  年増の醜女がうるさいデチ。再婚できなかったのは、お前に魅力がないからデチ。
「デテッテヨォッ!! アンタノ セイデ、コレイジョウ シアワセヲ ノガシタクナインダカラァッ!!」
狂ったような、しぃの叫び声。ちびギコはゆっくりと起き上がった。
体を起こしたちびギコに、手当たり次第に物を投げつけるしぃ。
ポケモナの鉛筆が飛んできた。TVのリモコンが左手に当たる。
学校の図書室で借りた絵本『8頭身のモナーはキモイ』も、投げられた。お気に入りのジエン縫いぐるみも、投げられた。
「デテケ デテケ デテケェェェェッ!!」
  ヒス女が……。こんな家、大嫌いデチ。
ちびギコは、足下に落ちている絵本と縫いぐるみを拾うと、乱暴にドアを閉めて家を出た。
家を出るとき、母親である、しぃの狂気じみた笑い声が聞こえてきた。
ちびギコは、その笑い声を振り払うかのように、駆けだした。

85 :ほんわか名無しさん :03/05/15 21:49

公園のベンチに腰掛けるちびギコ。
行く当ては、無い。友達のちびフサの家は、ゴールデンウィークなので、出払っているようだ。
仕方なく、ベンチに座りながら絵本を広げた。『8頭身のモナーはキモイ』。
1さんと8頭身の、下らなくも面白いやり取り、大抵の者なら笑ってしまうだろう。
でも、このちびギコは、笑わなかった。ちびギコは泣いていた。
  どうして、1さんは、家族でもない人からこんなに愛されてるのに、ちびタンは家族にすら愛して貰えないんデチか?
そう思うと、ちびギコは自分があまりにも惨めで、涙が止まらなかった。
絵本に印刷されている、1さんの笑顔の上に、ちびギコの涙が落ちた。
しばらくして、泣いているちびギコの隣に、腰掛ける者がいた。ちびギコは顔を上げない。今は誰の顔も見たくない。
「何で泣いてるの? 迷子になったの?」
ちびギコは首を横に振った。
「じゃあ……怪我したの? お腹が痛いとか?」
「何で、世の中には、沢山の人に愛される人と、家族にも愛されない人がいるんデチかね」
冷め切ったちびギコの声。無理に大人のフリをしている子供の声。
「う、ぁ。え〜と、ね。それは、あ〜……」

86 :ほんわか名無しさん :03/05/15 21:50

ちびギコの問いに、戸惑う隣の者。ポリポリと頭を掻いている音が聞こえる。
「その、愛されないことは、悲しいけど、仕方のないこと。……だと思いまつ」
ちびギコは、憤りを覚えた。自分の人生の不満を仕方のないことと言われたのだ。
  ケッ、お前は、きっと誰かに愛されてるから、そんなことが言えるデチ。皆、皆、大嫌いデチ。
「あのね」
隣の者は、静かに話し始めた。その声は、暖かく、しかしどこか寂しそうな声だった。
「漏れには、すっごく大好きな人がいるんだYO」
  おのろけか。おめでたいデチね。どうせ、ちびタンの悲しみは、誰にも分からないデチよ。
「でも、その人には漏れの気持ちは伝わらない。いくら愛しても、伝わらないんだ」
いつの間にか、ちびギコは俯いて、隣の者の話に耳を傾けていた。
隣の者は、大きなため息を吐いてから、再び話し始める。
「漏れ、いや、漏れ達の仲間は、決して愛して貰えない。キモイから」
しばしの、沈黙。
「でも、愛されなくても、愛することは出来るんだYO」

87 :ほんわか名無しさん :03/05/15 21:50
月日は流れた。
ちびギコは、立派な成ギコとなり、母親から離れ、一つの小さな家庭を持った。
幸せな家庭。妻のしぃは、利発な女だ。二人の子供達は健やかに成長している。
親に愛されなかったギコが、愛のある家庭を作れたのである。
ギコの幸せは、皮肉にも肉親によって、壊された。
度重なる、電話。連絡をよこさないギコへ、母親しぃが怒っているのである。
「アンタ、ソダテテヤッタ オンヲ ワスレテンジャナイデショウネ!?
 スコシクライ オヤニ オカネヲ オクロウ トカ、オモワナイワケェ!?」
こんな電話が、一日に何度もかかってくる。妻のしぃは、ストレスで痩せてしまった。
  あの婆、ちびギコの時も、今現在も、俺を煩わせやがって。
ギコは、痩せ細った愛妻の姿を見て、決心した。
  婆、殺してやる。
しぃが、殺されるのは、よくあることだ。警察も、しぃ殺しに関しては、どうせ大した捜査はしないだろう。
  殺せる。今の俺には、あの婆を殺せるだけの力がある。


88 :ほんわか名無しさん :03/05/15 21:50
ギコは、幼少時代を過ごした、あの忌まわしい家へと足を運んだ。
この家の主、ヒス女は澱んだ空気が漂う家の中で、寝転んでいた。
毛玉が大量についた布団を被り、うつ伏せになってTVを見ている。
しぃ婆は、久しぶりに我が子の姿を見ると、醜い笑顔を浮かべた。
「ヘヘ、カエッテキタノ。デ、ナニ シニキタノ?」
ふと、しぃ婆の顔が曇る。眉間にシワが寄る。
「アンタ、テブラナノ? オカネハ? テミヤゲハ?
 ナニモ モッテコナイデ、ヨク コノ イエノ シキイヲ マタゲタワネェ」
産まれてから今まで蓄積された、母への怒りが、鉄砲水のように、ギコの中で爆発した。
「ふざけんなよゴルァッ!!」
寝ている母の腹を蹴り上げる。咽せる母。顔面を殴ると、しぃの鼻から血が吹き出た。
「汚いじゃねぇかぁ婆よぉ」
「ウブブ、ユル、ユルジデェ……」
哀願する母をギコは痛め続ける。耳をもぐ、歯をへし折る。ギコの考え得る限りの残虐行為。
「シィィィィギィイァァァァァァァァアァァァアアアア!!」
しぃの悲鳴。もっとも近頃の世の中、しぃの叫び声が聞こえてきても、助けに来る香具師はいない。
頭を鷲掴みにして、椅子の角に勢い良くぶつける。
肉片と血が椅子の角に付着し、忌々しい母は、もう二度と動かなかった。

89 :ほんわか名無しさん :03/05/15 21:51
母殺しを終えたギコは、一件の交通事故を偶然、目撃した。
赤い血溜まりの中、長い手足を、変な方向に曲げている体が見える。
モナー族の無邪気な顔に、その長い手足や、鍛え抜かれた筋肉は、あまりに不釣り合いだった。
赤いスプレーで撒き散らしたように、口から血が飛び散っていた。
野次馬が集まっている。その野次馬を掻き分けて、進み出る一人のAAがいた。
彼は、死んだように動かない事故の被害者に、ゆっくりと、歩み寄った。
ギコは、黙って彼のようすを見ていた。
「ぁ、あ……」
意味の無い発音が、彼の口から漏れる。
いや、この発音には、単なる言葉よりも深い意味が込められているのかも知れない。
彼は、被害者のそばにしゃがみ込んだ。彼の膝が、血で濡れた。
「死ぬなんて、バカな。君は、いつだって、殺しても死にそうになかったのに」
ギコは、彼の目から涙が零れるのを見た。
その時、血塗れの被害者の右手が、かすかに動いた。まるで、彼の涙に反応するかのように。
救急車のサイレンが聞こえる。

90 :ほんわか名無しさん :03/05/15 21:51

救急隊員が、駆けつけた時には、被害者は事切れていた。
野次馬にも、救急隊員にも構うことなく、彼は被害者に縋り付き、嗚咽を漏らしていた。
「嫌だよ。死んじゃ嫌だよ。
 また、僕を追いかけてよ。また、元気にキモイ姿を見せてよ、8頭身!」

ギコは、遠いちびギコ時代を思い出していた。
母親に理不尽に怒鳴られ、公園のベンチに座ったあの日。
隣に座った者は、言っていた。
「漏れ、いや、漏れ達の仲間は、決して愛して貰えない。キモイから」
  そんなこと、無いじゃねぇかよゴルァ。
  お前だって、良い友人に愛されてるじゃねぇか。
ギコは、野次馬達が去った後も、一人、歩道に佇んでいた。
これから、ギコは家へ帰る。妻子の待つ家へ。

 完


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